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ジャイレータについて

  • Posted by: kimi
  • 2009年6月19日 09:30
  • Gyrator

 IC内へフィルタ回路を設計する際にコイルがあったらどんなに便利でしょう。高周波回路ではアルミ配線を渦状に巻いたスパイラル・インダクタがありますがインダクタンスは小さく使える周波数帯が限られます。
 アクティブフィルタを構成するにあたり、インダクタンスを模擬する回路技術としてジャイレータ(Gyrator)があります。ジャイレータは1948年、フィリップス社のB.D.H.Tellgenが「The Gyrator,A New Electric Network Element」で発表しました。ジャイレータの目的はキャパシタンスでインダクタンスを得る事です。近年では第二世代カレントコンベア(CCⅡ)を用いた回路技術もありますが、古き技術であるジャイレータもまだまだ現役だと思います。私も数十kHzの2次バンドパスフィルタをジャイレータを応用して回路設計した経験が数度あります。
本エントリーではジャイレータの概要について述べたいと思います。

 ジャイレータは電圧を電流へ、電流を電圧へ変換する作用を有するものです。(図1へ概念図を示します)

Gyrator_F.jpg


図1


図1より、

\Large\left\{\left.\begin{eqnarray}    V_1&=& 0V_2 + kI_2   \\ I_1&=& \frac{1}{k} V_2 + 0I_2 \end{eqnarray}...(1)式


\left(\large\begin{array}{GC+23}        V_1 \\I_1\end{array}\right) = \left(\large\begin{array}{GC+23} 0 &k \\{1}/{k} &0 \end{array}\right) \left(\large\begin{array}{GC+23} V_2 \\ \pm I_2 \end{array}\right)...(2)式


ここでkはジャイレーション抵抗、電流の向きはブラックボックスから見て"+"が流出方向、"-"が流入方向です。

(1)式の基本行列:Fは、

F = \left(\large\begin{array}{GC+23} 0 &k \\{1}/{k} &0 \end{array}\right) = \left(\large\begin{array}{GC+23} 0 &k \\G &0 \end{array}\right)

ここで"G"はジャイレーション抵抗"k"の逆数でジャイレーションコンダクタンスと呼ばれます。

2次側の電流の向きをブラックボックスへ流入する方向とし、(1)式を電流"I"で整理すると下記になります。

\Large\left\{\left.\begin{eqnarray}    I_2&=& - \frac{1}{k} V_1   \\ I_1&=&  \frac{1}{k} V_2   \end{eqnarray}


\left(\large\begin{array}{GC+23}        I_1 \\I_2\end{array}\right) = \left(\large\begin{array}{GC+23} 0 &{1}/{k} \\-{1}/{k} &0 \end{array}\right) \left(\large\begin{array}{GC+23} V_1 \\ V_2 \end{array}\right)...(3)式


(3)式のアドミッタンス行列:Yは

Y = \left(\large\begin{array}{GC+23} 0 &G \\-G &0 \end{array}\right) =  \left(\large\begin{array}{GC+23} 0 &G \\0 &0 \end{array}\right) + \left(\large\begin{array}{GC+23} 0 &0 \\-G &0 \end{array}\right)...(4)式


(4)式より、ジャイレータを構成するには「正相と逆相のコンダクタンスを有する2つの回路を並列接続すればよい」ことが導き出されました。

導きやすさからYパラメータで考えます。

Gyrator_y.jpg


図2


図2は4端子回路をYパラメータで表現しました。この場合の電圧/電流は、

\Large\left\{\left.\begin{eqnarray}    i_1&=& y_{11} v_1 + y_{12} v_2   \\ i_2&=& y_{21} v_1 + y_{22} v_2 \end{eqnarray}...(5)式


(5)式へ(4)式の下記の条件を代入します。

\large\begin{array}{GC+23} y_{11}=0 & ,y_{12}=y_{12} \\y_{21}=-y{21} & ,y_{22}=0 \end{array}


\Large\left\{\left.\begin{eqnarray}    i_1&=& y_{12} v_2   \\  i_2&=& -y_{21} v_1  \end{eqnarray}


負荷条件:i_2 = -v_2 y_Lを用いて式を整理し入力インピーダンスを求めると、

Z_i = \frac {v_1}{i_1} = \frac {1}{y_{12} y_{21}} y_L...(6)式
Gyrator_ideal.jpg


図3


(6)式より、負荷へキャパシタンス:y_L = j\omega Cを接続すると、入力インピーダンスはインダクタンスに見えることが分かります。この方法により一端が接地されたインダクタンスを得ることができます。またy_{11} = 0y_{22} = 0は入出力インピーダンスを高くすることにより理想ジャイレータの姿に近づきます。入出力インピーダンスが高いコンダクタンスを持った増幅器などは、お馴染みのOTAなどが挙げられます。
回路技術者の腕の見せ所は、理想ジャイレータのアドミッタンス行列にOTAの特性を如何に近づけるかでしょう。
ご参考になれば幸いです。


参考文献:
電子展望 Gyrator


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山梨県韮崎市生まれ

玉川大学情報通信工学科を卒業後 アナログIC設計開発に従事

2002年故郷へ戻り起業

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