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雑音指数と等価入力雑音、信号源抵抗の関係

 増幅器の雑音に対する性能の良さを評価する指標として雑音指数(NF)を取り扱うことがあります。しかし雑音指数が**dBと言われてもピンときません。私たちが回路設計するときは等価入力雑音電圧/等価入力雑音電流/信号源抵抗の絶対値の方が使い慣れています。本エントリーでは雑音指数と各雑音源/信号源抵抗値の関係について調べていきたいと思います。


 便宜上、本エントリーでは雑音係数を"F" その対数10 log_{10} Fを"NF"とします。雑音係数/雑音指数は、

\left\{ \Large\left.\begin{eqnarray}    F&=&\frac{Si/So}{So/No}\\NF&=&10log_{10}F\end{eqnarray}...(式1)


雑音指数NFは増幅器を通過した後、信号対雑音比が悪化する程度を示しています。増幅器の雑音がゼロの理想増幅器ならば雑音係数F=1→NF=0dBです。

式1をわかりやすい形に変形します。

F={\frac{No}{Ni}} \cdot {\frac{Si}{So}}...(式2)


\frac{Si}{So}は増幅器の利得分の1ですから、No \cdot \frac{Si}{So}は全等価入力雑音を表しています。

IEEE基準では雑音係数Fは標準温度290[°K]の環境下で増幅システム等の単位帯域幅あたりの雑音電力を入力端子に接続されている信号源抵抗で発生する雑音電力の比であるとしています。これは式2と同意で、
F=[全等価入力雑音電力]÷[信号源抵抗で発生する雑音電力] であることが分かると思います。

Noiseless-amplifier.png
図1


 図1は増幅器で発生する雑音を入力端子に接続されるEn,Inで表し、更にその増幅器の入力端子へ信号源抵抗Rsとその雑音源Esが接続された状態を示しています。これより全等価入力雑音をEniとすると、

Eni^2 = Es^2 + En^2 + In^2 Rs^2

すなわち、

\Large\left.\begin{eqnarray}    NF&=&10log_{10}F\\ &=&10log_{10}\frac{Es^2+En^2+In^2Rs^2}{Es^2}\end{eqnarray}...(式3)


式3で使い慣れた全等価入力雑音と信号源抵抗の関係が導き出されました。

これをグラフで図示して更に分かりやすくしてみましょう。

Vni_vs_Rs.png


グラフ1


 グラフ1は横軸に信号源抵抗:Rs、縦軸は雑音とし式3の各雑音源をプロットしたものです。比較しやすいように等価入力雑音:En=10nV/√Hz、In=4pA/√Hzで与え、雑音帯域幅はΔf=1Hzです。等価入力雑音:Enは信号源抵抗に関係ありませんので一定です。等価入力雑音電流は信号源抵抗:Rsで雑音電圧になりInRsは信号源抵抗が大きくなると増加します。全等価入力雑音:EniはEnとInRsの関数です。
 雑音指数は全等価入力雑音と信号源抵抗の熱雑音の比としました。(青線と黒線の比)このグラフより信号源抵抗が小さい場合はこの比が大きくなりNFは悪化します。En=InRsの信号源抵抗でその比は最小になりNFの最小値がここにあります。信号源抵抗を更に大きくするとEniはInRsに沿って大きくなりますので再びNFは悪化します。これらの関係が直感的に分かるとNF=**dBの増幅器回路設計が身近になると思います。

 NFが最小になる信号源抵抗:Roは重要です。この値の時に信号源抵抗の熱雑音に加えられる増幅器の雑音が最小になります。このRoは、

Ro=\frac{En}{In}...(式4)

グラフ1の場合は10nV/4pA=2.5kΩが求まります。
このときの雑音係数をFoptとし、式3を更に整理すると、

F_{opt}=1+\frac{EnIn}{2kT \Delta f}...(式5)


雑音指数の変化をグラフ2へ示します。式5の雑音指数はグラフの最下部(Rs/Ro=1)の値です。

NF_vs_Rs.png


グラフ2


 以下は等価入力雑音電圧、等価入力雑音電流から最適信号源抵抗、雑音指数をもとめるスクリプトです。お役にたてたら幸いです。

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等価入力雑音電圧[V]:
等価入力雑音電流[A]:

最適信号源抵抗[Ω]:
雑音指数[dB]:




参考文献
低雑音電子回路の設計 Motchenbacher/Fitchen著 斉藤正男監訳

Bit Error Ratio

 近年デジタル化が進みデータ伝送の回路設計が増えています。回路の雑音特性からBER(Bit Error Ratio)を計算する技術者の方も多いのではないでしょうか。本エントリーは信号をベースバンドで伝送する場合のBERについて考えていきたいと思います。

 パルスの有無あるいは極性の判定を行う場合、信号振幅と雑音振幅の合計値が設定された判定レベルを超えるか否かで判定します。ここでは、NRZなどの単極パルスについて説明します。

BER.png
 図1

 増幅後のパルス波形は図1のようになります。単極パルスの場合にはパルスの有無を判定するものですから判定レベルは Vp/2となります。
雑音振幅を Vnとするとパルスが無い場合には Vn>Vp/2のとき判定誤りを生じ、パルスがある場合には Vn<-Vp/2のときが判定誤りになります。

したがって、符号パルスの発生確率をPとすると、誤りの起こる確率は式1を計算すれば求まります。ただし、Prは確立を示しています。

Pe= P\cdot Pr\left( Vn<-\frac{Vp}{2} \right) + (1-P)\cdot Pr \left( Vn> \frac{Vp}{2} \right) ...式1

 いま雑音が確立密度関数 Pn(V)=\frac {1}{\sqrt{2\pi}\sigma_n}e^{-V^2/2\sigma_n^2} で与えられるガウス雑音であるとすると、(式1)は次のようになります。

Pe=\int_{-\infty}^{-Vp/2} Pn(V)dV + (1-P)\int_{Vp/2}^\infty Pn(V)dV = \frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma_n}\int_{Vp/2}^\infty e^{-V^2 /2\sigma_n^2} ...式2

 ここで、誤差関数 erfc(x)=\frac {2}{\sqrt\pi}\int_0^x e^{-x^2} dx を用いると、(式2)は

Pe=\frac {1}{2} \left{ 1-erfc\left( \frac{Vp}{2\sqrt2 \sigma_n}\right) \right}...式3
 信号波高値 Vpと雑音実効値 σnの比は S/Nを表しますから、式3で単極符号の S/N比と誤り率(Bit Error Ratio)が求まったことになります。

 以下は上に記載した方法で S/N比からBERを求めるスクリプトです。お役にたてたら嬉しいです。
誤差関数はヘイスティングスの近似式を用いて計算しています。

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S/N比:

Bit Error Ratio:


雑音帯域幅

 雑音帯域幅は電力利得を周波数に対して積分し電力利得の最大値で除算したものです。この値を用いて増幅器の帯域幅から出力雑音を計算したり、また雑音測定の際に1次LPFを交流電圧計の前に配置しカットオフ周波数から雑音帯域幅を計算して単位Hzあたりの雑音を得るために使用します。
雑音帯域幅は前置LPF或いは増幅器のカットオフ周波数とは異なるので注意が必要です。


 グラフのイメージで表すと下図になります。

 図1は1次遅れ系の伝達関数をX軸/Y軸ともLinear軸で表しました。
雑音を単位Hzあたりに換算するためにはX軸の雑音帯域幅とY軸の利得の直方体面積を求め全雑音を除算します。
雑音帯域幅はその周波数を境にして右側と左側の面積が等しい位置にあります。

 図2はX軸をlog軸、Y軸をdB換算しました。このように1次遅れ系のカットオフ周波数より雑音帯域幅は上方に位置することが直感的に分かると思います。

Linear AXIS.png
 図1 


log scale.png
 図2 


 ここで雑音帯域幅を計算してみます


 電力利得は下式で与えられます。

\frac {1}{G_O}\int_{\small 0}^\infty G(f)df

 電力利得は電圧利得の2乗に比例するので、
B=\frac {1}{\left|T_O \right|^2}\int_{\small 0}^\infty \left| T(f) \right|^2 df...式1

増幅器の閉ループ、或いは測定時の前置LPF等が式2の1次遅れ系であるとすれば、

T(s)= \frac {T_O}{1+s\tau}...式2

(式2)を(式1)へ代入し、整理すると、

B= \left[ \frac {1}{\sqrt {(2\pi \tau)^2}} \tan^{-1} \sqrt {(2 \pi \tau)^2}f \right]_0 ^\infty =\frac {1}{2 \pi \tau} \cdot \frac {\pi}{2}

 これよりカットオフ周波数(電力半値周波数)の\frac {\pi}{2}上方に雑音帯域幅があることがわかります。

以下は雑音帯域幅 [Hz],またその平方根 [Hz1/2]を計算するスクリプトです。
お役にたてたら嬉しいです。

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カットオフ周波数 fc[Hz]



雑音帯域幅 [Hz]

平方根した雑音帯域幅 Hz1/2



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立ち上がり速度とカットオフ周波数

 前回のエントリーに引き続き、本エントリーではパルス波の立ち上がり・立ち下がり速度とそれを通過させるために必要な増幅器のカットオフ周波数(電力半値周波数)を考えたいと思います。パルス波の立ち上がり・立ち下がり速度は多くの場合 振幅(Y軸)の10%〜90%区間の時間です。

\left\{\left.{0.1\times v(t)=V(1-e^{\frac{-t_1}{CR}})\\0.9\times v(t)=V(1-e^{\frac{-t_2}{CR}})}
v(t)で式を整理すると
V(1-e^{\frac{-t_1}{CR}})=\frac{V(1-e^{\frac{-t_2}{CR}})}{9}

 両辺の\lnをとり、更に式を整理します。
\ln 9=\ln e^{\frac{-t_1}{CR}}-\ln e^{\frac{-t_2}{CR}}
\ln 9=\frac{t_1 -t_2}{CR} \times \ln e

 カットオフ周波数(電力半値周波数)は f_c=\frac{1}{2\pi CR} 、立ち上がり速度は t_r=t_1 -t_2ですので、立ち上がり速度とカットオフ周波数の関係は以下のようになります。
t_r =\frac{\ln9}{2\pi f_c}

 以下は上式の関係を関数電卓を用いずにブログ内で計算するためのスクリプトです。お役にたてれば嬉しいです。

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立ち上がり時間、立ち下がり時間を[s]の単位で入力してください。"1e-6"等の指数表記が使えます。

立ち上がり/立ち下がり時間 [s]:



カットオフ周波数 [MHz]:



正弦波とSlew Rateの関係

 少しづつブログにも慣れてきました。仕事の合間をみて回路の計算によく出てくるものをまとめていこうと思います。今回のエントリーは増幅器のSlewRate(一般にSRと記します)と正弦波入力信号についてです。

 回路設計する上で小信号振幅における配慮だけでなく大振幅信号についても考えなければならないことは多々あります。大振幅時の信号はSRによって制限を受けるためオペアンプの選定でSRの規格に目がいく設計者も多いのではないでしょうか。以下はとても簡単な計算ですが 案外役に立つことがあるので参考になれば幸いです。

 利得"1"の回路にピーク値:Ep [V]、周波数:f [Hz]の正弦波:e(t)=Ep\cdot\sin(2\pi f)を印加した場合のことを考えます。この正弦波の傾きを調べるために微分すると、

\frac{de(t)}{dt}=2\pi f\cdot Ep\cdot\cos(2\pi ft)

 最大電圧変化率は\cos(2\pi ft)=1の時ですから

\frac{de(t)}{dt}=2\pi f\cdot Ep

 信号周波数をMHzの単位で表すと 2\pi f\cdot EpV/\mu sになります。これより回路利得が"1"で信号振幅:Ep、周波数:MHzの信号を歪み無く通過させるには2\pi f\cdot Ep以上のSRが必要になります。

 以下は上記の関係式を電卓をたたかずに このブログで計算するためのスクリプトです。お役にたてれば嬉しいです。


Web Calculator [SR]

入力周波数 [MHz]

入力電圧最大値 [V]



SR [V/μs]



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About Me

山梨県韮崎市生まれ

玉川大学情報通信工学科を卒業後 アナログIC設計開発に従事

2002年故郷へ戻り起業

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