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バイカッドフィルタの仕組みについて

 バイカッドフィルタは多目的フィルタとして使用されています。回路の原型は図5(本エントリー下部)のもので教科書などに出ていますから一度は目にした方も多いのと思います。教科書に出ている回路でも「どうやってこの回路を作ったんだろう...?」と疑問に思ったことはありませんか。本ブログではこの原理をアナログコンピュータの知識を用いながら探っていきたいと思います。

 バイカッドフィルタ(Biquad filter)はBiquadratic function(双二次関数)の全ての形を実現できることからこの名前がついています。双二次関数の一例式を式(1)に示します。

\frac {v_o}{v_i} = \frac {ms^2+cs+d}{s^2+as+b} ...(1)


 フィルタを設計したことがある方なら、式中の"s"はラプラス演算子であることが直ぐ分かると思います。この式で分子の定数を下記のように与え、a=\frac {\omega_o}{Q}b=\omega_o^2とすると見慣れたフィルタの式が出てきました。

a) m=c=0 の場合

\frac {v_o}{v_i} = \frac {d}{s^2+as+b}

この式は低域通過関数です

b) m=d=0 の場合

\frac {v_o}{v_i} = \frac {cs}{s^2+as+b}

この式は帯域通過関数です

c) c=d=0 の場合

\frac {v_o}{v_i} = \frac {ms^2}{s^2+as+b}

この式は高域通過関数です

 その他のフィルタ関数はここでは割愛しますが、式(1)の双二次関数を回路で構成できればいろんなフィルタが実現できそうです。
具体的にはこの双二次関数をアナログコンピュータを用いて解を導き出すようにプログラミング(回路を作る)することになります。

 アナログコンピュータというのは現在使われているデジタルコンピュータの前に考案されました。コンピュータといっても画面がカラフルなわけではありません。主に数式の解を求めるための計算機です。数字を物理量で与えて計算させるもので、例えば"1"という数字を"1V"とかにします。(これはあくまでも例です)私は学生実験のときにアナログコンピュータを触りました。大きな版の裏側には積分器回路があり、両端がバナナジャックの配線で回路を作っていきます。抵抗はポテンショメータで演算結果は電圧として観測するものでした。蛇足ですが、あの頃は「こんなもの...」と思っていました。いまになって思えば良い経験をしたと感じています。アナログIC電子回路設計をするとフィルタの設計はついて回りますので。

 本題に戻ります。
 双二次関数にアナログコンピュータで使用する新しい変数"x"を導入して式(1)を変形します。

\frac {v_o}{v_i} = \frac {mx+\frac {cx}{s} + \frac{dx}{s^2}}{x+ \frac{ax}{s} +\frac{bx}{s^2}} ...(2)

ここでは式(1)を\frac {x}{s^2}で除算しました。
 分母のv_i = x+ \frac{ax}{s} +\frac{bx}{s^2}...(3) で\frac{x}{s}\frac{x}{s^2}が求まれば、それらを分子のmx+\frac {cx}{s} + \frac{dx}{s^2}...(4) の該当箇所へ回路中で印加し、定数は別個に与えることでv_oが求まります。

 まず式(3)を積分回路と加減算回路を用いてブロック線図で表します。

biquad1.png


図1


図1に式(4)を加えると、

biquad2.png


図2


図2のブロック線図を実際の積分回路、加減算回路で置き換えるとフィルタになります。しかし一般的に加算回路は非反転増幅器と同じく同相入力時のエラー(CMRRが帰還率の影響を受ける)がありますから精度が良くありません。

 ここでもう一工夫します。非反転回路を使いたくないので式(3)を図3のように改良します。

biquad3.png


図3


このブロック線図へ式(4)を加えたいのですが、図2であった変数"x"が消えています。そこで式(4)を変形します。
式(3)を式(4)へ代入すると、

v_o = mv_i - (ma-c)\frac{x}{s} - (mb-d)\frac{x}{s^2} ...(5)


ここでma-c \geq 0mb-d \geq 0とするとブロック線図は図4になります。

biquad4.png


図4


図4の伝達関数は、

\frac {v_o}{v_i} =- \frac {ms^2+cs+d}{s^2+as+b}

となり位相が反転した形となりますがフィルタの動作としては問題になりません。

 図4の積分器、インバータを具体化した回路が図5になります。

biquad5.png

図5

 これでバイカッド回路が導き出されました。このように求めたい伝達関数が既知であればアナログコンピュータの原理を使うと回路で実現できることが分かると思います。バイカッドフィルタの他にも応用がきくのではないでしょうか。


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山梨県韮崎市生まれ

玉川大学情報通信工学科を卒業後 アナログIC設計開発に従事

2002年故郷へ戻り起業

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