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アナログ回路屋

mimetexを使ってブログやWebページへ数式を入れる

  • Posted by: kimi
  • 2010年1月24日 14:28
  • mimeTeX

 拙ブログの中で意外とアクセス数が多いのはMovableTypeで数式を!です。この記事はOSがSolaris10のサーバーでmimetex.cgiを稼働させ、LaTeXライクな入力で数式をgifイメージに変換し埋め込む方法を書いたものです。検索キーワード等より推測すると、アクセス数が多い理由はmimetexの情報が意外と少ないからではないでしょうか。
 毎回の記事が数式を使うようであれば契約されているサーバーでmimetex.cgiを稼働させた方がベターだと思いますが、今だけ使いたいという方もいらっしゃると思います。
 本エントリーは私どものサーバーで動いてるmimetex.cgiを使っていただき、簡単に見栄えのよい数式を生成してWebページやブログへ入れ込む手助けを目的とします。

 使い方は簡単でイメージタグを用い下記を埋め込むだけです。
 <img src="http://www.analib.com/cgi-bin/mimetex.cgi?数式">
私どものサーバーが不運にも未稼働であることも考えられますので、
 http://www.analib.com/cgi-bin/mimetex.cgi?数式 で得られたgifイメージを保存してアップロードという使い方もできます。
 http://www.analib.com/cgi-bin/mimetex.cgi?\Large f(x)=\int_{-\infty}^x e^{-t^2}dt 
という記述をすれば、

 \Large f(x)=\int_{-\infty}^x e^{-t^2}dt

が得られます。

 mimetexの数式例はこのページにあります。数式をクリックすればどのような記述になっているか分かります。

 面白い使い方としてカレンダー表記もできます。
 http://www.analib.com/cgi-bin/mimetex.cgi?\normalsize\calendar
とすると下記が得られます。
\normalsize\calendar

 LaTeXライクの記述法は作者であるJohn氏のWebサイトでLaTeX Tutorialが参考になるでしょう。ここにもフォームが用意されていて記述した数式を確認できます。

 不運にも私どものサーバーが稼働していないときはgifイメージが得られません。この場合はどうぞご容赦ください。

NF<3dBの効果について

以前のエントリーで雑音指数と等価入力雑音、信号源抵抗の関係について書きました。本エントリーでは雑音指数 NF=3dB を掘り下げようと思います。

図1の回路を用い、雑音指数と等価入力雑音、信号源抵抗の関係は前エントリーで説明しました。すなわち、

Noiseless-amplifier.png


図1
\left.\begin{eqnarray}&nbsp;&nbsp;&nbsp; NF&amp;=&amp;10log_{10}F\\ &amp;=&amp;10log_{10}\frac{Es^2+En^2+In^2Rs^2}{Es^2}\end{eqnarray}...(式1)

式1で増幅器の雑音に関係する項をEn_{{\tiny AMP}とすれば、

{En_{{\tiny AMP}}}^2=En^2+In^2Rs^2

ここでNF=3dBとします。すなわち、

3dB=10log_{10}\frac{Es^2+Eni^2}{Es^2}...(式2)

式2が成り立つには信号源抵抗熱雑音と増幅器の雑音は等しい関係にあります。
全体の雑音電圧をEnoとすると、

\left.\begin{eqnarray}&nbsp;&nbsp;&nbsp; Eno^2&amp;=&amp;2Es^2\\Eno&amp;=&amp;\sqrt{2}Es(=\sqrt{2}{En_{{\tiny AMP}})\end{eqnarray}...(式3)

以上より、雑音指数が3dBは信号源と増幅器が同じ雑音を出し、全体の雑音はそれぞれの雑音のsqrt{2}倍であることが分かります。

実際の回路設計のことを考えてみましょう。
増幅器の回路設計に苦心し、仮に増幅器の雑音がNF=3dB時より1/10まで下がったとします。

Eno^2=\frac{Es^2+0.1Eni^2}{Es^2}
\left.\begin{eqnarray}&nbsp;&nbsp;&nbsp; Eno^2&amp;=&amp;1.1Es^2\\Eno&amp;=&amp;\sqrt{1.1}Es(=\sqrt{1.1}{En_{{\tiny AMP}})\end{eqnarray}...(式4)

式3と式4を比較すると、雑音電圧はNF=3dBのときから約{\frac{1} {sqrt{2}}}(=0.707)倍しか改善されません。苦心して信号源の雑音より増幅器の雑音を下げNFを3dB以下にしても信号対雑音比で考えれば得るものは少ないというのが分かると思います。

参考文献
低雑音電子回路の設計 Motchenbacher/Fitchen著 斉藤正男監訳

トランジスタ技術への記事

拙著の紹介です。
CQ出版社 トランジスタ技術の2009年8月号に掲載されました。
記事は「高精度OPアンプ 設計の手順と考え方」です

toragi200908.jpg

内容は
バイポーラとCMOSからプロセスを選ぶ
  • 決め手は素子の耐圧
  • 素子の特性のマッチングはプロセスで決まる
  • エミッタ形状によるオフセット電圧の違い
  • 入力オフセット電圧はMOSよりもバイポーラの方が小さい
  • オフセット電流は入力電流がほとんど無いMOSがバイポーラよりも小さい
  • 初段増幅器の利得はバイポーラの方が大きくしやすい
  • バイポーラとMOSの比較のまとめと動向
回路ブロックごとの設計
  • まずは回路全体のイメージをつかむ
  • 初段増幅回路
  • オフセット電圧の検証
  • オフセット電流の検証
  • 初段利得
  • 2段目増幅回路
  • 出力回路
高精度オペアンプといえば優れた直流特性が挙げられますので、特にオフセット電圧/電流について式を交えながら詳しく書きました。

アナログICが身近に感じていただければとても嬉しいです。

Analog EN (技術者ネットワーク)

  • Posted by: kimi
  • 2009年6月22日 01:27
  • Analog EN
CQ出版さんの伝手で 6/19(金)に都内でアナログに関係する方々と交流する機会を得ました。
その名もAnalog EN(アナログ エン)
ホームページの言葉を引用すると、
「Analog ENはアナログにエン【縁】のある技術者のネットワークです」

群馬県/群馬大の「ぐんまアナログ技術立県事業/群馬アナログカレッジ」の有志から始まったとお聞きしました。
アナログ技術に関する話題で大いに盛り上がり、とても有意義な時間を過ごさせていただきました。
カメラを持っていったのですが話しに夢中になり1枚も写せなかったのが残念です。

参加された皆様、ご苦労様でした。
またお会いできることを楽しみにしております。

ジャイレータについて

  • Posted by: kimi
  • 2009年6月19日 09:30
  • Gyrator

 IC内へフィルタ回路を設計する際にコイルがあったらどんなに便利でしょう。高周波回路ではアルミ配線を渦状に巻いたスパイラル・インダクタがありますがインダクタンスは小さく使える周波数帯が限られます。
 アクティブフィルタを構成するにあたり、インダクタンスを模擬する回路技術としてジャイレータ(Gyrator)があります。ジャイレータは1948年、フィリップス社のB.D.H.Tellgenが「The Gyrator,A New Electric Network Element」で発表しました。ジャイレータの目的はキャパシタンスでインダクタンスを得る事です。近年では第二世代カレントコンベア(CCⅡ)を用いた回路技術もありますが、古き技術であるジャイレータもまだまだ現役だと思います。私も数十kHzの2次バンドパスフィルタをジャイレータを応用して回路設計した経験が数度あります。
本エントリーではジャイレータの概要について述べたいと思います。

 ジャイレータは電圧を電流へ、電流を電圧へ変換する作用を有するものです。(図1へ概念図を示します)

Gyrator_F.jpg


図1


図1より、

\Large\left\{\left.\begin{eqnarray}&nbsp;&nbsp;&nbsp; V_1&amp;=&amp; 0V_2 + kI_2&nbsp;&nbsp; \\ I_1&amp;=&amp; \frac{1}{k} V_2 + 0I_2 \end{eqnarray}...(1)式


\left(\large\begin{array}{GC+23}&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; V_1 \\I_1\end{array}\right) = \left(\large\begin{array}{GC+23} 0 &amp;k \\{1}/{k} &amp;0 \end{array}\right) \left(\large\begin{array}{GC+23} V_2 \\ \pm I_2 \end{array}\right)...(2)式


ここでkはジャイレーション抵抗、電流の向きはブラックボックスから見て"+"が流出方向、"-"が流入方向です。

(1)式の基本行列:Fは、

F = \left(\large\begin{array}{GC+23} 0 &amp;k \\{1}/{k} &amp;0 \end{array}\right) = \left(\large\begin{array}{GC+23} 0 &amp;k \\G &amp;0 \end{array}\right)

ここで"G"はジャイレーション抵抗"k"の逆数でジャイレーションコンダクタンスと呼ばれます。

2次側の電流の向きをブラックボックスへ流入する方向とし、(1)式を電流"I"で整理すると下記になります。

\Large\left\{\left.\begin{eqnarray}&nbsp;&nbsp;&nbsp; I_2&amp;=&amp; - \frac{1}{k} V_1&nbsp;&nbsp; \\ I_1&amp;=&amp;&nbsp; \frac{1}{k} V_2&nbsp;&nbsp; \end{eqnarray}


\left(\large\begin{array}{GC+23}&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; I_1 \\I_2\end{array}\right) = \left(\large\begin{array}{GC+23} 0 &amp;{1}/{k} \\-{1}/{k} &amp;0 \end{array}\right) \left(\large\begin{array}{GC+23} V_1 \\ V_2 \end{array}\right)...(3)式


(3)式のアドミッタンス行列:Yは

Y = \left(\large\begin{array}{GC+23} 0 &amp;G \\-G &amp;0 \end{array}\right) =&nbsp; \left(\large\begin{array}{GC+23} 0 &amp;G \\0 &amp;0 \end{array}\right) + \left(\large\begin{array}{GC+23} 0 &amp;0 \\-G &amp;0 \end{array}\right)...(4)式


(4)式より、ジャイレータを構成するには「正相と逆相のコンダクタンスを有する2つの回路を並列接続すればよい」ことが導き出されました。

導きやすさからYパラメータで考えます。

Gyrator_y.jpg


図2


図2は4端子回路をYパラメータで表現しました。この場合の電圧/電流は、

\Large\left\{\left.\begin{eqnarray}&nbsp;&nbsp;&nbsp; i_1&amp;=&amp; y_{11} v_1 + y_{12} v_2&nbsp;&nbsp; \\ i_2&amp;=&amp; y_{21} v_1 + y_{22} v_2 \end{eqnarray}...(5)式


(5)式へ(4)式の下記の条件を代入します。

\large\begin{array}{GC+23} y_{11}=0 &amp; ,y_{12}=y_{12} \\y_{21}=-y{21} &amp; ,y_{22}=0 \end{array}


\Large\left\{\left.\begin{eqnarray}&nbsp;&nbsp;&nbsp; i_1&amp;=&amp; y_{12} v_2&nbsp;&nbsp; \\&nbsp; i_2&amp;=&amp; -y_{21} v_1&nbsp; \end{eqnarray}


負荷条件:i_2 = -v_2 y_Lを用いて式を整理し入力インピーダンスを求めると、

Z_i = \frac {v_1}{i_1} = \frac {1}{y_{12} y_{21}} y_L...(6)式
Gyrator_ideal.jpg


図3


(6)式より、負荷へキャパシタンス:y_L = j\omega Cを接続すると、入力インピーダンスはインダクタンスに見えることが分かります。この方法により一端が接地されたインダクタンスを得ることができます。またy_{11} = 0y_{22} = 0は入出力インピーダンスを高くすることにより理想ジャイレータの姿に近づきます。入出力インピーダンスが高いコンダクタンスを持った増幅器などは、お馴染みのOTAなどが挙げられます。
回路技術者の腕の見せ所は、理想ジャイレータのアドミッタンス行列にOTAの特性を如何に近づけるかでしょう。
ご参考になれば幸いです。


参考文献:
電子展望 Gyrator


テキストブラウザ lynx

  • Posted by: kimi
  • 2009年4月28日 10:05
  • linux | lynx
 googleさんのガイドラインに書かれていたテキストブラウザのlynxをubuntuへ導入・使用してみました。私はホームページの確認 alt属性やlinkタグの確認などに用いました。Windows環境の方はこちらのサイト様:lynxでアクセシビリティチェックに詳しく書かれています。
 lynxはブラウザの他にファイル管理などにも使われるようで、まるでDOS時代のFDのような感じで使えることにビックリしました。操作も簡単なのでとても使い易いです。

ubuntuへlynxのインストールです。端末にて、
sudo apt-get install lynx-cur
その後 /etc/lynx-cur/lynx.cfg を日本語が表示できるように編集します。以下の3行を検索して修正します。
#CHARACTER_SET:iso-8859-1
#ASSUME_LOCAL_CHARSET:iso-8859-1
#PREFERRED_LANGUAGE:en
コメントを外し(#をとる)、下記のようにします。
CHARACTER_SET:utf-8
ASSUME_LOCAL_CHARSET:utf-8
PREFERRED_LANGUAGE:ja
 コマンドなどは多くのサイトさんが紹介されていますのでここでは割愛します。例えばwww.example.com のブラウジングだけなら端末で、
lynx http://www.example.com
 あとは↑↓矢印キーで前のアンカー、次のアンカーです。操作に困ったときは Ctrl+Gで切り抜けます。?を押せばヘルプ画面が出てきます(英語)

ubuntuでの表示例を載せておきます。
lynx.png

analib.comのサイトをリニューアルしました

 analib.comのサイトを全面リニューアルしました。SEO対策の目的が主ですが、デザインも変えました。
 今回のリニューアルが3回め。analib.comのドメインを取得したのが 2002年9月ですから少しサボり過ぎだと反省してます。これからも少しづつですが更新していこうと思います。

 ブログに書き忘れていましたが、やまなし産業支援機構様の1社1テクノというページがあります。今年の1月末〜2月頃だと思うのですが弊社を紹介していただきました。
やまなし産業支援機構様、ありがとうございました。

雑音指数と等価入力雑音、信号源抵抗の関係

 増幅器の雑音に対する性能の良さを評価する指標として雑音指数(NF)を取り扱うことがあります。しかし雑音指数が**dBと言われてもピンときません。私たちが回路設計するときは等価入力雑音電圧/等価入力雑音電流/信号源抵抗の絶対値の方が使い慣れています。本エントリーでは雑音指数と各雑音源/信号源抵抗値の関係について調べていきたいと思います。


 便宜上、本エントリーでは雑音係数を"F" その対数10 log_{10} Fを"NF"とします。雑音係数/雑音指数は、

\left\{ \Large\left.\begin{eqnarray}&nbsp;&nbsp;&nbsp; F&amp;=&amp;\frac{Si/So}{So/No}\\NF&amp;=&amp;10log_{10}F\end{eqnarray}...(式1)


雑音指数NFは増幅器を通過した後、信号対雑音比が悪化する程度を示しています。増幅器の雑音がゼロの理想増幅器ならば雑音係数F=1→NF=0dBです。

式1をわかりやすい形に変形します。

F={\frac{No}{Ni}} \cdot {\frac{Si}{So}}...(式2)


\frac{Si}{So}は増幅器の利得分の1ですから、No \cdot \frac{Si}{So}は全等価入力雑音を表しています。

IEEE基準では雑音係数Fは標準温度290[°K]の環境下で増幅システム等の単位帯域幅あたりの雑音電力を入力端子に接続されている信号源抵抗で発生する雑音電力の比であるとしています。これは式2と同意で、
F=[全等価入力雑音電力]÷[信号源抵抗で発生する雑音電力] であることが分かると思います。

Noiseless-amplifier.png
図1


 図1は増幅器で発生する雑音を入力端子に接続されるEn,Inで表し、更にその増幅器の入力端子へ信号源抵抗Rsとその雑音源Esが接続された状態を示しています。これより全等価入力雑音をEniとすると、

Eni^2 = Es^2 + En^2 + In^2 Rs^2

すなわち、

\Large\left.\begin{eqnarray}&nbsp;&nbsp;&nbsp; NF&amp;=&amp;10log_{10}F\\ &amp;=&amp;10log_{10}\frac{Es^2+En^2+In^2Rs^2}{Es^2}\end{eqnarray}...(式3)


式3で使い慣れた全等価入力雑音と信号源抵抗の関係が導き出されました。

これをグラフで図示して更に分かりやすくしてみましょう。

Vni_vs_Rs.png


グラフ1


 グラフ1は横軸に信号源抵抗:Rs、縦軸は雑音とし式3の各雑音源をプロットしたものです。比較しやすいように等価入力雑音:En=10nV/√Hz、In=4pA/√Hzで与え、雑音帯域幅はΔf=1Hzです。等価入力雑音:Enは信号源抵抗に関係ありませんので一定です。等価入力雑音電流は信号源抵抗:Rsで雑音電圧になりInRsは信号源抵抗が大きくなると増加します。全等価入力雑音:EniはEnとInRsの関数です。
 雑音指数は全等価入力雑音と信号源抵抗の熱雑音の比としました。(青線と黒線の比)このグラフより信号源抵抗が小さい場合はこの比が大きくなりNFは悪化します。En=InRsの信号源抵抗でその比は最小になりNFの最小値がここにあります。信号源抵抗を更に大きくするとEniはInRsに沿って大きくなりますので再びNFは悪化します。これらの関係が直感的に分かるとNF=**dBの増幅器回路設計が身近になると思います。

 NFが最小になる信号源抵抗:Roは重要です。この値の時に信号源抵抗の熱雑音に加えられる増幅器の雑音が最小になります。このRoは、

Ro=\frac{En}{In}...(式4)

グラフ1の場合は10nV/4pA=2.5kΩが求まります。
このときの雑音係数をFoptとし、式3を更に整理すると、

F_{opt}=1+\frac{EnIn}{2kT \Delta f}...(式5)


雑音指数の変化をグラフ2へ示します。式5の雑音指数はグラフの最下部(Rs/Ro=1)の値です。

NF_vs_Rs.png


グラフ2


 以下は等価入力雑音電圧、等価入力雑音電流から最適信号源抵抗、雑音指数をもとめるスクリプトです。お役にたてたら幸いです。

Web Calculator

JavaScript対応ブラウザで表示してください

等価入力雑音電圧[V]:
等価入力雑音電流[A]:

最適信号源抵抗[Ω]:
雑音指数[dB]:




参考文献
低雑音電子回路の設計 Motchenbacher/Fitchen著 斉藤正男監訳

バイカッドフィルタの仕組みについて

 バイカッドフィルタは多目的フィルタとして使用されています。回路の原型は図5(本エントリー下部)のもので教科書などに出ていますから一度は目にした方も多いのと思います。教科書に出ている回路でも「どうやってこの回路を作ったんだろう...?」と疑問に思ったことはありませんか。本ブログではこの原理をアナログコンピュータの知識を用いながら探っていきたいと思います。

 バイカッドフィルタ(Biquad filter)はBiquadratic function(双二次関数)の全ての形を実現できることからこの名前がついています。双二次関数の一例式を式(1)に示します。

\frac {v_o}{v_i} = \frac {ms^2+cs+d}{s^2+as+b} ...(1)


 フィルタを設計したことがある方なら、式中の"s"はラプラス演算子であることが直ぐ分かると思います。この式で分子の定数を下記のように与え、a=\frac {\omega_o}{Q}b=\omega_o^2とすると見慣れたフィルタの式が出てきました。

a) m=c=0 の場合

\frac {v_o}{v_i} = \frac {d}{s^2+as+b}

この式は低域通過関数です

b) m=d=0 の場合

\frac {v_o}{v_i} = \frac {cs}{s^2+as+b}

この式は帯域通過関数です

c) c=d=0 の場合

\frac {v_o}{v_i} = \frac {ms^2}{s^2+as+b}

この式は高域通過関数です

 その他のフィルタ関数はここでは割愛しますが、式(1)の双二次関数を回路で構成できればいろんなフィルタが実現できそうです。
具体的にはこの双二次関数をアナログコンピュータを用いて解を導き出すようにプログラミング(回路を作る)することになります。

 アナログコンピュータというのは現在使われているデジタルコンピュータの前に考案されました。コンピュータといっても画面がカラフルなわけではありません。主に数式の解を求めるための計算機です。数字を物理量で与えて計算させるもので、例えば"1"という数字を"1V"とかにします。(これはあくまでも例です)私は学生実験のときにアナログコンピュータを触りました。大きな版の裏側には積分器回路があり、両端がバナナジャックの配線で回路を作っていきます。抵抗はポテンショメータで演算結果は電圧として観測するものでした。蛇足ですが、あの頃は「こんなもの...」と思っていました。いまになって思えば良い経験をしたと感じています。アナログIC電子回路設計をするとフィルタの設計はついて回りますので。

 本題に戻ります。
 双二次関数にアナログコンピュータで使用する新しい変数"x"を導入して式(1)を変形します。

\frac {v_o}{v_i} = \frac {mx+\frac {cx}{s} + \frac{dx}{s^2}}{x+ \frac{ax}{s} +\frac{bx}{s^2}} ...(2)

ここでは式(1)を\frac {x}{s^2}で除算しました。
 分母のv_i = x+ \frac{ax}{s} +\frac{bx}{s^2}...(3) で\frac{x}{s}\frac{x}{s^2}が求まれば、それらを分子のmx+\frac {cx}{s} + \frac{dx}{s^2}...(4) の該当箇所へ回路中で印加し、定数は別個に与えることでv_oが求まります。

 まず式(3)を積分回路と加減算回路を用いてブロック線図で表します。

biquad1.png


図1


図1に式(4)を加えると、

biquad2.png


図2


図2のブロック線図を実際の積分回路、加減算回路で置き換えるとフィルタになります。しかし一般的に加算回路は非反転増幅器と同じく同相入力時のエラー(CMRRが帰還率の影響を受ける)がありますから精度が良くありません。

 ここでもう一工夫します。非反転回路を使いたくないので式(3)を図3のように改良します。

biquad3.png


図3


このブロック線図へ式(4)を加えたいのですが、図2であった変数"x"が消えています。そこで式(4)を変形します。
式(3)を式(4)へ代入すると、

v_o = mv_i - (ma-c)\frac{x}{s} - (mb-d)\frac{x}{s^2} ...(5)


ここでma-c \geq 0mb-d \geq 0とするとブロック線図は図4になります。

biquad4.png


図4


図4の伝達関数は、

\frac {v_o}{v_i} =- \frac {ms^2+cs+d}{s^2+as+b}

となり位相が反転した形となりますがフィルタの動作としては問題になりません。

 図4の積分器、インバータを具体化した回路が図5になります。

biquad5.png

図5

 これでバイカッド回路が導き出されました。このように求めたい伝達関数が既知であればアナログコンピュータの原理を使うと回路で実現できることが分かると思います。バイカッドフィルタの他にも応用がきくのではないでしょうか。


ボーデ線図

 負帰還の安定性などを検証する場合ボーデ線図を用います。このエントリーではボーデ線図について計算をしながら概要を示したいと思います。
 伝達関数G(s)が演算子sの関数である場合G(s)の周波数特性を求めるためにs→jωと置換すると交流理論の複素表記になります。
 G(jω)の絶対値と偏角を考えると、

\left\{|G(j\omega)|=\frac{|V_o|}{|V_i|}\\ \varphi=argG(j\omega)=argV_o -argV_i}\right.


 |G|は入力電圧と出力電圧の大きさの比を表し、ψは入力電圧に対する出力電圧の位相差を表しています。

time domain.png


図1


 |G|とψはいずれも角周波数の関数でありωを0〜∞へ変化させたとき|G|、ψがどのように変化するかを知ることが回路の特性を理解するのに重要です。角周波数ωが広い範囲にわたって変化したときG(jω)がどのように変化するか図式で表現するひとつの方法にボーデ線図があります。

 ボーデ線図による方法ではG(jω)は2本の曲線で表します。横軸には対数目盛でω(実際は周波数f)をとり、縦軸には利得|G|のデシベル値をとって表した利得曲線と、縦軸には位相ψを度の単位で表した位相曲線の2本です。
例として1次遅れ伝達関数のボーデ線図を図2へ示します。

freq domain.png


図2


一時遅れ関数は、G(s)=\frac {K}{1+s\tau}で表し、s\to j\omegaと置換して

G(j\omega)=\frac {K}{1+j\omega \tau}

絶対値をとると

|G|=\frac {K}{\sqrt{1+\omega^2 \tau^2}}

これより、

|G|\text{[dB]} =20\log_{\tiny {10}} K-10\log_{\tiny {10}} (1+\omega^2 \tau^2) ...(1)

\varphi=-\tan^{\tiny{-1}} \omega \tau ここで\omega=2\pi f

これが図2の利得曲線と位相曲線です。

(1)式の利得曲線は2本の漸近線で表せます。
f \ll \frac {1}{2\pi \tau}のとき
\tau =\frac {1}{\omega_c}とおいて(1)式を書き直すと

|G|\text{[dB]} =20\log_{\tiny {10}} K-10\log_{\tiny {10}} (1+\frac {\omega^2}{\omega_c^2}) ...(2)

f \ll \frac {1}{2\pi \tau}\omega \ll \frac {1}{\tau} \to \omega \ll \omega_c

したがって(2)式は、

\begin{eqnarray}&nbsp;&nbsp;&nbsp; |G|\text{[dB]} &amp;=&amp;20\log_{\tiny {10}} K-10\log_{\tiny {10}} 1 \hspace{40}&nbsp; (1 \gg \frac {\omega^2}{\omega_c^2})\\ &amp;=&amp;20\log_{\tiny {10}}K&nbsp;&nbsp; \end{eqnarray} ...(3)


f \gg \frac{1}{2\pi\tau}のとき
同様に
\omega \gg \frac {1}{\tau} \to \omega \gg \omega_c
(2)式は

\begin{eqnarray}&nbsp;&nbsp;&nbsp; |G|\text{[dB]} &amp;=&amp;20\log_{\tiny {10}} K-10\log_{\tiny {10}} (\frac{\omega}{\omega_c})^2 \hspace{40}&nbsp; (1 \ll \frac {\omega^2}{\omega_c^2})\\ &amp;=&amp;20\log_{\tiny {10}}K - 20\log_{\tiny {10}}\omega \tau&nbsp;&nbsp; \end{eqnarray} ...(4)


この2本の漸近線はf_c = \frac{1}{2\pi \tau}で交わります。
この点における利得と位相は

|G|\text{[dB]} =20\log_{\tiny {10}} K-10\log_{\tiny {10}} (1+\frac {\omega^2}{\omega_c^2})

周波数f_c \hspace{20} (=\omega_c)になった時を考えると

\begin{eqnarray}&nbsp;&nbsp;&nbsp; |G|\text{[dB]} &amp;=&amp;20\log_{\tiny {10}} K-10\log_{\tiny {10}} (1+1^{\tiny 2})\\ &amp;=&amp;20\log_{\tiny {10}}K - \text{3.01}&nbsp;&nbsp; \end{eqnarray}


 この点はカットオフ周波数で低周波利得から3.01dB下がった点です。カットオフ周波数が低周波利得より-3dB下がった周波数というのはこの式から理解することができます。
このときの位相は

\begin{eqnarray}&nbsp;&nbsp; \varphi_c &amp;=&amp; -\tan^{\tiny -1} \omega \tau \\ &amp;=&amp; -\tan^{\tiny -1} 1 \hspace{10}=-45&nbsp; \end{eqnarray} ...(5)




 次に(4)式20\log_{\tiny {10}}K - 20\log_{\tiny {10}}\omega \tauの利得が減少する傾きについて考えてみます。
2つの周波数f_1 \hspace{10},\hspace{10} f_2の比を考え、

\frac {f_1}{f_2} = 10 → f_1f_2は1dec(デケード)離れている

\frac {f_1}{f_2} = 2 → f_1f_2は1oct(オクターブ)離れている

といいます。これは、

\begin{eqnarray}&nbsp;&nbsp;&nbsp; x\text{[dec]} &amp;=&amp;\log_{\tiny {10}} \frac {f_1}{f_2} \hspace{10} \text{dec}\\ y\text{[oct]} &amp;=&amp; \log_{\tiny {2}} \frac{f_1}{f_2}&nbsp; \hspace{10}\text{oct}&nbsp; \end{eqnarray}

(4)式の-20\log_{\tiny {10}} \omega \tauの項は角周波数\omegaの変化に対し-20\text{dB}/\text{dec}(周波数が10倍になると-20dB減る)で減少する傾きであることがわかります。
また\frac {\log_{\tiny {10}} x}{\log_{\tiny {2}} x}= \frac {1}{3.32}より

-20\log_{\tiny {10}}= -6.02\log_{\tiny {2}}

と書き直せるので、-6\text{dB}/\text{oct}(周波数が2倍になると-6dB減る)で減少するとも言います。

(5)式のψは周波数が0 \le \omega \le \inftyとすると-\tan^{\tiny{-1}}より

0 \le \omega \le \tau

0 \le \varphi \le -90

となります。

f_c =\frac {1}{2\pi \tau} \hspace{10} (\omega_c = \frac {1}{\tau})の周波数の\frac {f_c}{10}10f_cを考えると
\frac {f_c}{10} \hspace{10} (=\frac {\omega_c}{10})の場合

\varphi_1 =-\tan^{\tiny{-1}} \frac {1}{10\tau} \cdot \tau =-5.7

10f_c \hspace{10} (=10\omega_c)の場合

\varphi_1 =-\tan^{\tiny{-1}} \frac {10}{\tau} \cdot \tau =-84.3


以上より簡略化したボーデ線図を図3のように書けます。


bode.png

図3

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山梨県韮崎市生まれ

玉川大学情報通信工学科を卒業後 アナログIC設計開発に従事

2002年故郷へ戻り起業

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